2010年10月21日

まえがきに代えて


歌を作って歌いたいと思ったのは、中学に入った頃だろう。

いわゆるニューミュージックが歌謡曲に覆い被さってきた時代である。タクローと陽水が手を組んだ「フォーライフレコード」の誕生に胸が高鳴った。

親にフォークギターをねだり、月刊明星の「歌本」を見ながら、曲のコードや成り立ちを覚えていった。

詞を作り始めたのもその頃で、当時のメモが今も手元にある。

記念すべき処女作は「春」という短編。

デリカシーな風が耳元をくすぐる
流れる小川のひゃっこいせせらぎ
ちょっぴり薄着の若い娘
グリーンのにおいの春がくる
(後略)

まだ作ってもいない自作の歌の題名だけを連ねて「妄想アルバム」をこしらえて、一人悦に入ったりしていた。

「春」はその「アルバム」の「A面の」2曲目を予定していた。これをどんな曲にしたかったのか、今でも私には分かるのである。

その後も詞の数は増えていったが、当時好いていた女の子たちのことを書いたものがほとんどで、とても公開できる代物ではない。

また目が合ったとか、ふくらはぎがたまらんとか、テニス焼けの肌がどうとか……。(以下自主規制)

言わずと知れた「中二病」(厨二病)の盛りである。四六時中、熱病に冒されているような、多感でおバカな年頃である。

この症状は一向に治まる気配がなく、高校の卒業まで続いた。

詞の数は増えていったが、メロディが乗ることはなかった。同じく友人と音を鳴らすこともなかった。誰ぞのコピーに入れ込むこともなかった。

大して好きでもない歌をまねするより、歌いたい歌を作って歌う方が楽しいということを知っていたのだろう。それが良かったかどうかは分からない。
posted by hiro at 19:23| Comment(0) | 詞曲集 | 更新情報をチェックする

2010年11月04日

なんとか云ってくれ


しずくのついたグラスの向こう 紅いマニキュア
「素敵だよ」「……」
肩寄せ合ってスクリーンの向こう 甘いラブシーン
「素敵だねえ」「……」 《踏んだり蹴ったり》

愛を囁く心の奥は 泣いているんだよ
なんとか かんとか 頼むから云ってくれ
このままじゃ……

花柄のシャツの襟足の向こう きらめくうぶ毛
「暑いねえ」「……」
しぶきのかかる噴水の向こう 無邪気な子供 
「可愛いねえ」「……」 《焼け石に水》

笑みを浮かべる気持ちの奥は 泣いているんだよ
うんとか すんとか 頼むから云ってくれ
このままじゃ……

淡いタバコの煙の向こう また生あくび
「眠たいの?」「……」
オイラの映る瞳の向こう 何考えてるの?
「帰ろうか」「……」 《やけのやんぱち》

心を覗くメガネの奥は 泣いているんだよ
なんとか かんとか 頼むから云ってくれ
このままじゃ……
(1981年)
posted by hiro at 08:13| Comment(0) | 詞曲集 | 更新情報をチェックする

2010年11月11日

帰さない Tonight


9時までじゃ
俺の化けの皮は剥がれないね
そのうちに オイタの一つぐらいするはずだけど
本当の姿 見れると思うよ

今日までの
お前からオサラバする日だもの
もう一杯呑んだら みんなの振る手が見えるだろう
お家のこと 大丈夫だから

帰さない Tonight 夜は楽しや
離さない All night 恋はさらなり

そのお前の肌のような
赤い陽が昇るまで
帰さない Tonight

ありのまま
胸の中 一つずつ呟くよ
俺の肩の所 眠ってても眠ったふりでも
そんなことは どうでもいいから

戻れない Tonight 夜は二人で
走れない Midnight 愛はさらなり

このグラスの氷のように
その心 溶けるまで
帰さない Tonight
(1982年)
posted by hiro at 06:22| Comment(0) | 詞曲集 | 更新情報をチェックする

2010年11月18日

Thank You Girl


だってみんなやさしいんだもん なんて
唇とがらせて君は言うけれど
そうじゃないんじゃない
君がそれだけ素敵なんだって

春の訪れに合わせて少しずつ
綺麗になってゆく君を見ていたら
急に淋しくなった
僕は置き去り 並んじゃ歩けないよ

最後にちょっとカッコつけたいけど
シャレた言葉も見つからないし
横顔思い浮かべて Thank you girl

不意打ちの雨に煙った帰り道に
冷たく悲しげな君を抱きしめた
濡れ髪 にじむ Line
ゾクッとするほど素敵に見えたよ

思えばよっぽど意気地がなかったけど
想い出美しく色つけておいて
女の子得意だし
君も上手にしておいてくれるだろう

最後にちょっとカッコつけたいけど
シャレた言葉も見つからないし
横顔思い浮かべて Thank you girl
(1983年)
posted by hiro at 07:42| Comment(0) | 詞曲集 | 更新情報をチェックする